「涼音から精気をわけてもらったからな。
治った」

にかっと旦那様が牙をのぞかせて笑う。
そうか、こんなに簡単に治るのか。
だったら、心配しなくてもいい。

「それにしても」

口の中のあんパンをお茶で流し、旦那様は私と向かいあった。

「普通、あれだけ精気を吸われたらぐったりしているものなのだがな」

旦那様は盛んに首を捻っているが、そうなのか。
しかし、具合の悪さなど少しも感じない。
強いていえば少々、あくびが出るくらいだ。

「あまりにうまくて無意識に貪ってしまって、殺してしまったんじゃないかと心配したくらいなのだがな」

「え……」

さらっと言って旦那様はお茶を飲んでいるが、もしかして私は命の危機だったんだろうか。
あの、ぼーっとなったのはその、……そういう気分になったのではなく、お迎えが来そうになっていたから?

「いやー、涼音は良質な精気を、しかも人よりもかなり多く蓄えられるようだ。
これからもよろしく頼む」

「……は、……はい」

旦那様に精気を吸われるたびに私は命の危機かもしれないのに彼は明るく笑っていて、微妙な気持ちになった。
しかし、旦那様の役に立って死ぬのであればそれはそれで本望だ。
――でも。