遠ざかっていく彼の目を、熱に浮かされて見ていた。

「……うまかった」

自身が濡らした唇をゆっくりと舐め、彼が妖艶に微笑む。
それを見て急に、我に返った。

「えっ、あっ、は、破廉恥です……!」

火を噴くほど熱い頬に両手で触れる。
旦那様とあんな、イヤラシい接吻をしてしまった。
こんなの、許されるはずがない。

「補充していいと言ったのは、涼音だろうが」

膝の上に頬杖をつき、にやにやとおかしそうに笑っている旦那様は、性格が悪い。

「い、言いましたけど。
あんな、……あんなイヤラシい、せ、接吻など……!」

先ほどの、旦那様の舌の感触を思い出し、また顔が燃えるように熱くなる。

「人が接吻で済ませてやったのに、文句を言うのか」

「え……」

ずいっと旦那様が顔を近づけてくる。
また唇が触れてしまいそうな距離で、思わず背中が仰け反っていた。

「本当は交わったほうが効率よく精気を吸収できるのだ」

すーっと旦那様の手が、着物の襟もとから帯を通り、下腹部へと下りていく。

「しかし、涼音にはまだ早いと思って接吻で済ませてやったのに。
そうか、交わったほうがいいのか」