呼ばれた瞬間、もう条件反射で箒を放り出し、紫乃の元へと駆けていた。

「もう。
遅いわ、お姉さま。
私が呼んだらすぐに来てっていつも言ってるでしょ?」

「す、すみません」

その場に平身低頭して謝る。
とにかく妹の機嫌を損ねてはいけない。

「ちょっと五桐百貨店までお遣いに行ってきて」

「その。
……まもなく閉店時間ですが」

おそるおそる、遠回しに無理ではないかと進言してみる。
途端に紫乃の機嫌が悪くなった。

「……この私が、行けって言っているの」

「でも、その」

行ったところで店は閉まり、目的のものは手に入らない。
それに夕餉にも間に合わないだろう。

「おかあーさまー。
おねーさまが私のお願い、聞いてくれないんだけどー」

紫乃が声をかけると奥から、義母が姿を現した。

「どういうことかしら?」

不機嫌そうに義母の、片眉と語尾が上がっていき、身が竦んだ。

「お前、可愛い妹の頼みが聞けないの?」

「い、いえ。
決して、そんなわけでは」

ガタガタと震えながら、床に額を擦りつける。
このあいだは気が済むまで、竹鞭で打たれた。