幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

「こんなものよりもずっと、甘い匂いがする」

顔を離した旦那様はグラスに残っていた葡萄を摘まみ、指先まで私の口に押し込んできた。

「うん、甘い」

私の唾液のついた指先を旦那様は舐め、うっとりと目を細めた。

きっちり二時間後、菰野さんが迎えに来た。

「これはまた、大量に買いましたね」

お買い上げの山を見て彼は呆れ気味だが、普通はそうなると思う。

「これは持ち帰りだ」

「車に載りますかね……?」

菰野さんは困っているようだが、それもそうだろう。
旦那様が指したところには二抱え分の荷物が置いてあった。

「載りますかねじゃなくて載せろ」

「そんな無茶な」

車内の空間は有限だ。
それとも裏道みたいに、あの狭い車に大量に詰め込める裏技でもあるんだろうか。

……などと思ったがそんなものはなく、積みきれなかった分は明日、届けてもらうようになった。

帰りも裏道を使う。
しかしいくらも走らないうちに旦那様はなにかに気づいたのか、厳しい表情になった。

「菰野」

「はい」

返事をした菰野さんも緊張しているようだ。

「涼音を頼む」

「かしこまりました」