多くても普段着用の着物を二、三枚、それに長官にお目見えするとき用の外出着が一枚あれば事足りるはずなのだ。
なのに反物だけで優に十反を超え、まだまだ増え続けている。

「遠慮しているのか」

「遠慮というかその……」

これはもう、遠慮とかいう以前の問題、あきらかに買いすぎだ。

「遠慮しなくていいんだぞ。
そうだ、頼んでなかったがドレスも見せてもらえるか」

「はい、かしこまりました」

店員が合図し、他の店員が部屋を出ていった。
きっとドレスを取りにいったのだろう。
困惑している私を無視し、旦那様は今度は小物などを選んでいる。

「はぁーっ……」

無意識にため息が落ち、慌てて口を噤む。
騒がしくて誰も気づいていないようでよかった。
私が疲れ果てているなんて、気づかれてはいけない。

旦那様の気が済むまで買い物し、菰野さんが迎えに来るまでまだ時間があるからと食堂から甘味を取り寄せてくれた。

「どうぞ」

目の前に置かれたそれを見つめる。
それは深いグラスに果物とアイスクリームを美しく盛り付けてあった。

「あ、あの。
私ごときがこんなものをいただくわけには……」