普通のお店で、しかも旦那さまだけで買い物なんてさせてもらえるのか不安がある。

「ここ、綱木家の御用達なんですよ。
この人の扱いにも慣れてるんで、問題ないです」

「と、いうことだ」

だから天下の五桐呉服店でも『丸星(まるぼし)呉服店』でもなく、三羽呉服店なのか。

「それにあなたたちのデエトについてまわるなんて嫌ですよ。
でれでれしているこの人は気持ち悪いですからね」

菰野さんが心底嫌そうな顔をする。
彼からもデエトだといわれ、顔が熱くなる思いがした。

「白珱様。
ようこそお越しくださいました」

車を降りると店の前で、連絡してあったのか年配の男性店員が待っていた。
流れるようにそのまま、店の中ではなく応接室へと通される。

「本日は奥様のお召し物をお求めということでよろしいでしょうか」

「うん、頼むぞ」

私たちがソファーに座ると同時に、準備していたであろう反物や絵羽が次々に運び込まれてきた。

「……あの。
これって」

てっきり、売り場をいろいろ見て選ぶのだと思っていた。
まさか、個室対応だなんて思わない。

「やつがれが店内を歩いていると庶民が怖がるであろう?」