「まあまあ似合っているではないか」
しげしげと彼に眺められ、顔が熱くなった。
「では、いってくる」
「いってらっしゃいませ」
船津さんたちに見送られて車で家を出る。
運転はやはり、菰野さんだった。
「今日も車、なんですね」
まだ、貴族のあいだでも車は珍しい。
「官給品だ。
やつがれには天下の往来を歩くなだと」
けっと半ば、旦那様が吐き捨てた。
「この人が出歩くと、庶民が混乱しますからね。
当たり前です」
すかさず菰野さんが補足してくれる。
旦那様が鬼というのをさっ引いても、その異様な姿で目立つ。
もしかしたらだからなのかもしれない。
「菰野。
裏を使うぞ」
「はいはい」
旦那様がぱちんと指を鳴らしたのを合図に、菰野さんがペダルを踏み込む。
「え……?」
次の瞬間、ちらほらと歩いていた人が、消えた。
車のエンジン音以外、しない。
それに太陽が陰っているのか、薄暗くなった。
「例の、裏道だ」
「裏道……」
いわれてみれば先ほどまでとは違い、あの日のように両側に硬く戸口を閉ざした家々がどこまでも果てしなく並ぶ一本道になっている。
しげしげと彼に眺められ、顔が熱くなった。
「では、いってくる」
「いってらっしゃいませ」
船津さんたちに見送られて車で家を出る。
運転はやはり、菰野さんだった。
「今日も車、なんですね」
まだ、貴族のあいだでも車は珍しい。
「官給品だ。
やつがれには天下の往来を歩くなだと」
けっと半ば、旦那様が吐き捨てた。
「この人が出歩くと、庶民が混乱しますからね。
当たり前です」
すかさず菰野さんが補足してくれる。
旦那様が鬼というのをさっ引いても、その異様な姿で目立つ。
もしかしたらだからなのかもしれない。
「菰野。
裏を使うぞ」
「はいはい」
旦那様がぱちんと指を鳴らしたのを合図に、菰野さんがペダルを踏み込む。
「え……?」
次の瞬間、ちらほらと歩いていた人が、消えた。
車のエンジン音以外、しない。
それに太陽が陰っているのか、薄暗くなった。
「例の、裏道だ」
「裏道……」
いわれてみれば先ほどまでとは違い、あの日のように両側に硬く戸口を閉ざした家々がどこまでも果てしなく並ぶ一本道になっている。



