幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

デエトって好きあっているふたりがするものですよね?
でも、私は別に旦那様をどうとも思っていない。
一方的に求められてした婚姻にすぎないのだから、当たり前だ。
もっとも、好きあって結婚するほうが珍しいけれど。
しかし、仮にも夫婦で出かけるのだから、だったらデエトになるのだろうか……?

「とりあえず大至急、外に出してもおかしくない格好にしてくれ。
いいな」

「かしこまりました!」

船津さんたちは軍人さんのように敬礼したけれど、旦那様が一応、軍人だからなんだろうか。

そのあとはてきぱきとふたりが私を無難な着物に着替えさせてくれた。
薄い桃色に紫色の花を散らした銘仙だ。

「可愛いですけど、旦那さまの奥様に銘仙はやはりちょっとあれですわ」

「そこは旦那さまがよい着物を買ってくださると期待しましょう」

私からすれば銘仙なんて高級なものを着せてもらって恐縮至極なのだが、ふたりからみれば違うらしい。
確かに銘仙は一般庶民の着物で上流階級の人間はあまり着ないけれど。

「準備はできたか」

着替えが終わった頃、部屋に来た旦那様も着替えを済ませていた。
またしても洋装姿だ。