幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

これは蒿里の家だけではなく、どこの貴族も似たり寄ったりのはずだ。

「わかっている。
だから今から、何枚か買ってくる」

「そ、そんなの、申し訳ないです……!」

今朝は冗談だと思っていたが、旦那様は本気で私の着物を買いに行くつもりのようだ。
しかし、私ごときに無駄なお金を使わせていいはずがない。

「私にはあの着物で十分です」

「ダメだ」

「ダメですわ」

「ダメですわ」

「ダメでしょー、あれは」

四人同時にあの、山鳩色の着物にダメ出しされる。
そこまであの着物は酷いんだろうか。
確かに色は地味なうえに微妙だが、生地は木綿でもよいものだった。

「あのドブ色は普通、誰も着ない。
というか、よくこんな色の着物があったなというのが正直な感想だ」

旦那様の言葉に三人がうんうんと頷く。

「生地だってごわごわで、今時の一般庶民でもあんな着物は着ていないですわ。
地方の、極貧小作ならあるかもしれませんが」

はぁーっと、船津さんがため息を落とす。
あれが、そこまで酷いものだとは知らなかった。