幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

「そうですわ、あまりに似合って可愛らしいので忘れておりました。
私どもの制服など着ていたら、他の人間に新しいメイドと間違われてしまいますわ」

「それは大変ですわ。
涼音さまは旦那さまの奥様なのに」

険しい顔でふたりは話しているが、私は別にメイドに間違われようとまったく問題はない。
それどころか、嫁などといわれるよりも安心するくらいだ。

「でも旦那さま。
あの着物で外出させるよりは、メイド服のほうが何万倍もマシですわ」

あの着物とはきっと、今日着ていた私の着物をいっている。
確かにあれに比べれば今着ているメイド服のほうが何万倍もマシだだろう。

「とりあえず、お前たちの着物を貸してやれ。
ほら先日、作ってやったものがあるだろう?」

「あれは涼音さまには似合いませんわ。
涼音さまにはもっと、繊細な柄が似合います」

「そうですわ、そうですわ。
もっと淡い色がお似合いですわ」

主人と対等に議論しているふたりを驚愕の目で見ていた。
蒿里の家なら父どころか紫乃に抗議した途端、手が上がる。
下手したら追い出されるかもしれない。