幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

わたわたとしていたらバーン!と勢いよく、部屋のドアが開いた。

「かえったぞ、涼音」

すぐに旦那様が私の傍に来る。
きっと、旦那様の帰りを私が出迎えず、怒っているに違いない。

「お、お出迎えせず、大変申し訳ございません」

ソファーを下り、床の上で正座をして低く頭を下げた。
きっと怒鳴られる。
もしかしたら、殴られるかもしれない。
恐怖で身体をガタガタと震わせながらそのときを待った。

「別にいい。
戯れにブーツを履かせたら動けなくなっていると船津たちが言っていたからな」

くつくつと喉を鳴らし、旦那様はおかしそうに笑いながら私にソファーへ座るように促した。
旦那様がソファーに腰を下ろし、私もその隣におそるおそる座る。

「西洋の履き物は初めてか?」

「……はい」

今まで草履か下駄しか履いたことがない。
紫乃でこそお洒落がしたいとブーツを履いているが、義母も靴など履いたことがないのではないだろうか。

「やつがれも慣れるまで大変だったぞ。
しかも長靴だろう?」

足を上げ、履いているブーツを軽く彼は叩いた。

「蒸れるし、窮屈だし、最初は不満たらたらだった。