幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

そうとも言えず、曖昧な笑みを浮かべる。

「すみません、気づかなくて!
なにか……私たちの読んでいる雑誌でもお持ちいたしましょうか」

「あの、えっと。
じゃあ、それで」

彼女は申し訳なさそうで断りきれず、承知した。

「わかりました、すぐにお持ちします!」

ばたばたと彼女が部屋を出ていく。
本当に元気で明るく、よく気がついて私とは大違いだ。

すぐに戻ってきた彼女は私に数冊の雑誌を渡してくれた。

「はぁーっ」

ひとりになった途端、雑誌を前にしてため息が漏れる。
せっかく持ってきてくれた雑誌だが、私は……字が読めないのだ。
ひらがなは読めるが、漢字はほとんどわからない。
なにしろ無能の私に学は必要ないと父は尋常小学校にすら通わせてくれなかった。

それでもパラパラと雑誌を捲ってみる。
幸いなのか絵もたくさんあって、眺めているだけでそれなりに時間は潰せた。

そうこうしているうちに旦那様が帰ってきた。

「かえったぞ」

大きな声が屋敷中に響き渡る。
すぐに出迎えなければいけないのはわかっているが、このブーツでは動けない。