次は月。

「またまたはずれー」

最後は……猪。

「あー、惜しかったわね、お姉さま。
はずれには違いないんだけど」

真っ青になって固まっている私を妹は優越感に浸った目で見ていた。

「本当にお姉さま、蒿里家の……ううん。
あの雪姫さまの娘なの?」

私をバカにする紫乃の声がずん!と身体にのしかかる。

「お前にはほとほと失望した」

あきれかえった父のため息を聞き、身体がびくりと跳ねた。

「世間体があるから置いてやる代わりに、これからは紫乃に尽くして生きろ」

「は、はいっ……!」

異能を持っていない、無能な私はその場に這いつくばるしかなかった。

この世界は狭いので、あっという間に蒿里家の長女は無能だと広まった。
当然、母の生家にも。
以前は私を引き取ると蒿里家と揉めていたが、私が無能だとわかった途端、ぴたりとそれもなくなった。
無能はどこの家でもお荷物なのだ。

それ以来、私は家族ではなく下働きとしてこの家に置いてもらっている。


「こんな可愛くないのじゃダメ!
明日は啓輔(けいすけ)様にお会いするのよ!」