幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

「今、ちまたで話題の美肌化粧水です。
お肌がしっとり綺麗になりますよ」

そんな高級なものを塗られて、私の顔は大丈夫だろうか。

「そ、その。
そんな高級なもの、私なんかに……!」

私に断られ、なぜかふたりは顔を見あわせている。

「別に高級でもなんでもないですよ。
私たちのお給金で買えます」

「で、でも」

そんな、わざわざ買うようなものを私ごときに使うなんて、もったいなさすぎる。

「はいはーい。
いいですから、じっとしていてください」

「……はい」

これ以上、なにか言って彼女たちの機嫌を損ねるのが怖くて、おとなしく口を噤んだ。

「あとは、と」

今度は小さな陶器の入れ物から出したクリームが、しもやけで腫れ、あかぎれだらけの私の手に塗られる。

「今までとても、苦労されてきたのですね。
旦那様から少しだけですが、聞いています」

私を見るふたりの目は、憐れんでいるように見えた。

「大丈夫ですよ。
旦那さまがきっと、幸せにしてくださいます。
私たちもそうでした」

船津さんの言葉に同意するように田沢さんが頷く。
楽しそうに見える彼女たちだが、昔は酷い扱いを受けていたんだろうか。