幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

「では。
湯が溜まるまでに、お着物を」

船津さんの手が、私の帯にかかる。

「じ、自分でできますので!」

人様に服を脱がせてもらうなんてありえない。
数歩、後ろに下がって逃げたものの、控えていた田沢さんにがしっと肩を掴まれた。

「旦那さまから涼音さまを綺麗にしてやれと命じられていますので」

前に出した手の指をわきわきと動かしながら迫ってくる船津さんの目が、尋常ではない。
怯え、助けを求めて田沢さんを見上げたが、彼女もなんか普通ではない表情をしていた。

「や、やめて……」

怖くてうっすらと涙が浮かんでくる。

「ほら、観念してください」

逃げられないようにふたりから追い詰められた私の帯に、彼女たちの手がかかり――。


「ふわー」

私はすっかり緩みきった顔で浴槽の中に座っていた。
お湯加減はいい塩梅で、さらにハーブとやらを入れたらしく、いい匂いがする。

「涼音さまー、いかがですかー」

「凄く気持ちいい、……です」

身体も髪も石けんを使って洗ってくれた。
身体は本当につるつるピカピカだ。
こんなにいい心地なんて、実は天国にいるんじゃないかという気がしてくる。