私が持っている着物は昨日来ていた紫乃のお下がりと、あの山鳩色の着物しかない。
今日はもちろん山鳩色の着物のほうなので、旦那様の感想は正しいともいえる。
「ひとつ聞くが。
それは家の者が買ってくれたのか?
それとも蒿里家の女中は皆、その着物を着ているのか」
どうかそうであってくれと彼は祈るようだった。
私が首を横に振った途端、絶望の表情に変わる。
「一枚しかない着物をダメにしてしまったので、どなたかが見かねたのか譲ってくださいました」
「どなたか?
誰かもわからないのか」
「さあ……。
部屋の前に置いてありましたので」
たとえ不要品でも私にめぐめば、紫乃の、義母の機嫌を損ねるかもしれない。
だから皆、わからないようにこっそり私が寝起きしていた納戸の前に置くようになっていた。
「わかった」
はぁーっと旦那様が憂鬱そうなため息をつく。
「今日は早く帰るから、着物を買いに行こう。
公通が止めようと、絶対に行くからな」
「ハイ……?」
どうしてそこまで旦那様が私の着物に執着するのかよくわからなかった。
着物なんて着られればそれでいいのに。
朝食はやはり、洋風だった。
今日はもちろん山鳩色の着物のほうなので、旦那様の感想は正しいともいえる。
「ひとつ聞くが。
それは家の者が買ってくれたのか?
それとも蒿里家の女中は皆、その着物を着ているのか」
どうかそうであってくれと彼は祈るようだった。
私が首を横に振った途端、絶望の表情に変わる。
「一枚しかない着物をダメにしてしまったので、どなたかが見かねたのか譲ってくださいました」
「どなたか?
誰かもわからないのか」
「さあ……。
部屋の前に置いてありましたので」
たとえ不要品でも私にめぐめば、紫乃の、義母の機嫌を損ねるかもしれない。
だから皆、わからないようにこっそり私が寝起きしていた納戸の前に置くようになっていた。
「わかった」
はぁーっと旦那様が憂鬱そうなため息をつく。
「今日は早く帰るから、着物を買いに行こう。
公通が止めようと、絶対に行くからな」
「ハイ……?」
どうしてそこまで旦那様が私の着物に執着するのかよくわからなかった。
着物なんて着られればそれでいいのに。
朝食はやはり、洋風だった。



