「なあ。
それはいったい、なにをしているのだ?」

不意に旦那様の声が聞こえてきて、目が覚めた。
目を開けるとしゃがみ込んだ旦那様が、床に寝ている私を見ている。
彼も寝起きなのか寝間着姿だ。
しかもやはり、洋装だった。

「も、申し訳ございません」

慌てて起き上がり、彼の前で平身低頭する。
旦那様より遅くまで寝ていたなんて恥ずかしすぎて、あっという間に頬が熱くなった。

「別にいい。
昨日はいろいろあって疲れていたのだろう」

私を気遣われて驚いた。
どうも、昨日の夢はまだ続いているみたいだ。

「それより、ベッドから落ちたのか?」

ちらりと彼の視線がベッドへと向く。
しかし掛け布団まで全部、一緒に落ちるとは思わないだろう。

「その。
……ベッドが、柔らかすぎて」

だから床に寝ていたのだとまでは言えなかった。
そんなの、不審に思われるに決まっている。

「すまない、気づかなかった」

しかし彼はそれを聞いて頷き、立ち上がった。

「布団が引けるように畳を置いてやろう」

なにかを確かめるように彼は部屋の中を歩き回っている。

「そんな!
申し訳ないです!」