幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

自室として与えられた客間に戻り、寝る準備をしながらふと思う。
そういえば旦那様は、この部屋にはお風呂がついているといっていた。
あるのならば――入りたい。
彼は気にしていないようだったが、昨晩は水たまりの中に転び、泥だらけになっている。
朝、濡らした手ぬぐいで拭きはしたが、頭にはまだ泥がついている気がした。

「どこ、だろう……?」

部屋の中にある、ドアを開けてみる。
そこには西洋式の白いバスタブが設置してあった。

「どうやって入るんだろう……?」

そもそも薪を焚くところがなく、どうやって湯を沸かすのかわからない。
誰かを呼んで湯を持ってきてもらうとか?
そんなの、申し訳ない。

「はぁーっ」

結局、ため息をついて風呂を諦めた。
どうして旦那様はこんなに洋風のお屋敷に住んでいるのだろう?
建てものも食事も西洋式だなんて。
実家にも西洋風の応接室や食堂はあるが、日頃の食事まで洋食ではないし畳に布団を引いて寝起きしている。
千年以上生きているような口ぶりだったが、こういうのが好みなんだろうか。

水は汲めたので濡らした手ぬぐいで身体を拭くだけして寝間着に着替える。