彼は見本を見せるかのようにお皿の上のなんだかわからない四角い物体――あとで知ったがテリーヌというらしい――を切って、ぱくりと口に入れてみせる。
慌てて私も同じようにしてみた。
たぶん肉なんだろうなというのはわかるが、未知の味すぎて美味しいのかそうじゃないのかすらわからない。
「お、美味しいです」
それでも旦那様の機嫌を損ねないように曖昧に笑ってみせる。
「そうか。
それはよかった」
嬉しそうに笑い、旦那様はグラスのワインを飲んだ。
真っ赤なそれはワインだと知らなければ、血ではないかと疑ってしまいそうだ。
疲れる食事をどうにか終えたあと、旦那様は外出の準備を調えている。
「少し出てくる。
なに、仕事だ。
浮気などではない。
そんな不安そうな顔をするな」
おかしそうにふふっと小さく笑い、旦那様は指先で私の額を突いた。
「最近、人攫いが出るんだ。
それで公通に捕まえてこいと命令されてな」
そういえば昨晩、そんな話をしていたような気がする。
「遅くなるから涼音は先に寝ていていい」
「はいはーい、行きますよー」
そのタイミングで菰野さんが迎えに来た。
慌てて私も同じようにしてみた。
たぶん肉なんだろうなというのはわかるが、未知の味すぎて美味しいのかそうじゃないのかすらわからない。
「お、美味しいです」
それでも旦那様の機嫌を損ねないように曖昧に笑ってみせる。
「そうか。
それはよかった」
嬉しそうに笑い、旦那様はグラスのワインを飲んだ。
真っ赤なそれはワインだと知らなければ、血ではないかと疑ってしまいそうだ。
疲れる食事をどうにか終えたあと、旦那様は外出の準備を調えている。
「少し出てくる。
なに、仕事だ。
浮気などではない。
そんな不安そうな顔をするな」
おかしそうにふふっと小さく笑い、旦那様は指先で私の額を突いた。
「最近、人攫いが出るんだ。
それで公通に捕まえてこいと命令されてな」
そういえば昨晩、そんな話をしていたような気がする。
「遅くなるから涼音は先に寝ていていい」
「はいはーい、行きますよー」
そのタイミングで菰野さんが迎えに来た。



