幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

このぶんだと洋食の可能性が高いが、私にはマナーがわからない。
それ以前に、人間の食事ではなく生肉だったらどうしようという不安がある。
なにしろ相手は、鬼なのだ。

食堂のテーブルの上には洋食の準備ができていた。
お皿の周りにフォークやナイフがいろいろ並べてあるが、これはどうやって使うのだろう?

そのうち女中が料理を運んでくる。
それは人間の食べ物でほっとした。
しかし、私にはなじみのない料理ばかりだ。

「どうした?
食べないのか」

料理を前にして固まっている私に、旦那様が怪訝そうに声をかけてくる。

「あの。
えっと、その」

彼からしてみれば私は蒿里家の娘で、毎日鍋の底に残った余り物だけが食事だったなど知らない。
それにマナーがわからないというのは実家に泥を塗るようで、言いづらかった。

「ああ」

しかしまごまごしている私を見て、彼は合点がいったように頷いた。

「ナイフとフォークは外側から順に使っていくんだ。
やつがれも慣れるまでは大変だった」