幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

「も、申し訳ございません……!」

慌てて飛び起き、床にひれ伏す。
なんて恐れ多い……!

「別にいい」

立ち上がった旦那様は私の脇の下に手を入れ、ひょいっと抱き上げた。

「しっかし、軽いなー。
こうまで軽いと食い出がないな」

彼はおかしそうにくつくつと喉を鳴らして笑っているが。

「やはり、私を食べるつもりですか……?」

そうだよね、でないと私なんて引き取ったりしないだろう。

「だから。
やつがれはお前を喰ったりしない」

あまりに私が同じことばかり尋ねるからか、旦那様は呆れるようなため息を落として私をソファーの上に下ろした。

「言葉のあやというヤツだ、許せ」

真摯に彼が私に向かって頭を下げてくる。
こんな謝罪など今まで受けたことがなく、どうしていいのかわからない。

「あの。
えっと。
……はい」

「許してくれるのか!」

途端に旦那様の顔がぱーっと輝いた。
本当に表情がくるくると変わる方で世間の、長官以外の手には負えない凶暴な鬼というイメージとはかけ離れていて、驚いた。


そのうち夕餉の時間になったが、いろいろな意味で戦々恐々とした。