幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

そういえばあれはなんだったんだろう?
人っ子ひとりおらず、どこまでも続く道。
あれは、異常だった。

「あの。
昨日のあれは……」

「あれか?
あれは裏道だ」

「裏道……」

とは、表の大通りを通る正規道順ではなく、裏側の小路を通る順路のことだよね?
しかし私は、そんな道など通っていない。

「世の中には表に対して裏がある」

私が怪訝そうに顔をしていたからか、旦那様が説明してくれる。
〝表〟と自分の手のひらを指し、次に〝裏〟と反対返して甲を指した。

「その表に対して、あれは裏にある道だ。
通常は普通の人間は入れない。
だからあそこへ入れた涼音に能力がないというのが不思議なんだが……」

旦那様は盛んに首を捻っていて、申し訳ない。

「とにかく。
あそこはやつがれのような鬼や、(あやかし)がいて人をたぶらかす、危険な場所だ。
もう行くなよ」

「……はい……」

厳しい顔で旦那様は命じてきたが、どうやってあそこへ入ったのかすらわからない私は防ぎようがない。
私が困惑しているのに気づいたのか、旦那様は苦笑いした。