幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

皆さんは挨拶してくださったが、私よりもずっと立派に見えて恐縮してしまう。

「あの、奥様なんてそんな」

私はそんなに上等な身分ではない。
ただ、旦那様になぜか気に入られて、ここに連れてこられただけ。
彼は嫁などと言っているが、きっとただの気まぐれに違いない。

「でも、奥様は奥様ですし……」

皆さんが困惑した表情を浮かべる。
私としては気を遣ったつもりが反対に困らせてしまい、途方に暮れた。

「涼音と名で呼べばいい。
それでいいだろ?」

にかっと笑い、旦那様が私の顔をのぞき込む。

「は、はい。
それで」

それなら今までと変わらず、抵抗がないと思ったものの。

「では、涼音さま」

さま付けで呼ばれ、やはり恐縮した。

「昨日の今日でなにも用意していないから、当面は客間を使ってくれ」

そのあと、旦那様が案内してくれたのはやはり洋風の部屋だった。

「私がこんな立派な部屋を使ってもいいんでしょうか……?」

ベッドに物書き用の机、さらに簡単な応接セットまである。
客間と言っていったが、実家の紫乃の部屋よりも立派だった。

「立派って……」