幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

こちらのほうが一枚上手のようだ。
やはり、生きている長さが違うからなんだろうか。

「それはそうと、異能がないくらいでそんなに恐縮する必要なんてないですよ。
僕の弟なんて異能があるとはいえ、洗面器に張った水に小波が起こせるくらいですからね。
もう、無能と変わりませんよ」

これはもしかして、私を慰めてくれているんだろうか。
いきなりこんな優しい人たちに囲まれるなんて、私は夢でも見ているんだろうか。
無意識に手が、自分の頬をつねっていた。

「いたっ」

「なにをやっているのだ?」

突然、変な行動を私が取り、ふたりとも訝しがっている。

「あ、その。
夢でも見ているのかと思って……」

ひりひりと痛む頬を手で押さえる。
それでもまだ、信じられない。
ううん、夢だったとしてもいい。
このままずっと、覚めないで――。

「まあ、異能がないのは気にしないでいい。
それよりも、その着物をどうにかしないとな。
なんだそれは、ちんどん屋か」

私の頭のてっぺんからつま先まで視線を這わせたあと、旦那様は愉快そうに笑った。

「ちんどん屋!
確かに!」