私は本当に異能を持たない、ただの人間なのだ。
「こんなにうまそうな匂いがするんだぞ?」
気配が近づいてきて、彼がすんと私の首筋を嗅ぐ。
身体をガタガタと震わせながら、頭を下げた姿勢を保ち続けた。
「これで異能がないなんてありえない」
再び彼が、すんとにおいを嗅ぐ。
悲鳴が出そうになったが、かろうじて耐えた。
「で、でも。
何度試してもダメで……」
「それはやり方が涼音にあってなかったんじゃないか」
そんなことがあるのだろうか。
世間で試されている方法を全部やってみたが、それでもダメだったのだ。
「まー、気にすることはない。
のんびり探していけばいい」
旦那様の手が私の顔に触れ、頭を上げさせる。
目のあった彼はにっこりと私に微笑みかけた。
母以外にこんなふうに私に優しくしてくれる人は初めてで、戸惑った。
「どーでもいいですけど、そういうのは僕がいないときにやってくれません?
戦場では悪鬼のあんたのそういう顔、気持ち悪い」
反吐が出るといったふうに、本当に嫌そうに菰野さんが顔を顰める。
「それは悪かった」
しかし旦那様はそれをさらりと流してしまった。
「こんなにうまそうな匂いがするんだぞ?」
気配が近づいてきて、彼がすんと私の首筋を嗅ぐ。
身体をガタガタと震わせながら、頭を下げた姿勢を保ち続けた。
「これで異能がないなんてありえない」
再び彼が、すんとにおいを嗅ぐ。
悲鳴が出そうになったが、かろうじて耐えた。
「で、でも。
何度試してもダメで……」
「それはやり方が涼音にあってなかったんじゃないか」
そんなことがあるのだろうか。
世間で試されている方法を全部やってみたが、それでもダメだったのだ。
「まー、気にすることはない。
のんびり探していけばいい」
旦那様の手が私の顔に触れ、頭を上げさせる。
目のあった彼はにっこりと私に微笑みかけた。
母以外にこんなふうに私に優しくしてくれる人は初めてで、戸惑った。
「どーでもいいですけど、そういうのは僕がいないときにやってくれません?
戦場では悪鬼のあんたのそういう顔、気持ち悪い」
反吐が出るといったふうに、本当に嫌そうに菰野さんが顔を顰める。
「それは悪かった」
しかし旦那様はそれをさらりと流してしまった。



