一段落したところで旦那様が改まり、まだ私は挨拶すらしていないのだと気づいた。
「はい」
身体を少し斜めにして旦那様と向き合うようにして座り直し、姿勢を正す。
彼は膝の上に頬杖をつき、優しく微笑んで私を見ていた。
「蒿里涼音、です。
年は二十歳になりました。
異能は……なにも持っていません。
申し訳ございません」
膝につくほど深く、頭を下げる。
きっと、旦那様はがっかりしているだろう。
爵位こそさほど高くはないが異能持ちとしては名門の蒿里家の娘、しかも歴代で一、二位を争う未来視の能力を持っていたあの雪姫の娘なのだ。
高い能力を期待して、私を嫁に迎えたいと言ってくれたに決まっている。
「無能?」
意外そうな旦那様の声で身体がびくりと大きく震えた。
「そんなはずないだろ」
衣擦れの音がし、彼が姿勢を変えたのがわかった。
旦那様は疑っているようだが、確かに私は能力をこれっぽっちも持っていないのだ。
能力検定のあと、何度もカード当てに挑戦したが、一度たりとも当たらなかった。
他の能力があるのではないかと試してもみたが、それも全部不発に終わる。
「はい」
身体を少し斜めにして旦那様と向き合うようにして座り直し、姿勢を正す。
彼は膝の上に頬杖をつき、優しく微笑んで私を見ていた。
「蒿里涼音、です。
年は二十歳になりました。
異能は……なにも持っていません。
申し訳ございません」
膝につくほど深く、頭を下げる。
きっと、旦那様はがっかりしているだろう。
爵位こそさほど高くはないが異能持ちとしては名門の蒿里家の娘、しかも歴代で一、二位を争う未来視の能力を持っていたあの雪姫の娘なのだ。
高い能力を期待して、私を嫁に迎えたいと言ってくれたに決まっている。
「無能?」
意外そうな旦那様の声で身体がびくりと大きく震えた。
「そんなはずないだろ」
衣擦れの音がし、彼が姿勢を変えたのがわかった。
旦那様は疑っているようだが、確かに私は能力をこれっぽっちも持っていないのだ。
能力検定のあと、何度もカード当てに挑戦したが、一度たりとも当たらなかった。
他の能力があるのではないかと試してもみたが、それも全部不発に終わる。



