幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

滔々と彼は話し出そうとしたが、呆れ気味に菰野さんからため息を落とされあっけなく終了となった。

空気が微妙になったところで先ほどとは違う女性が入ってきて、お茶の準備がされる。
着ている服は同じなので、あれは制服なのかもしれない。
屋敷が洋風だからか、お茶請けがビスケットだからか、お茶は紅茶のようだった。

「わーっ」

お皿に盛ったビスケットが置かれ、菰野さんの目が輝く。
もしかして甘いものに目がないのだろうか。

「いっただきまーす」

早速、菰野さんはビスケットに手を伸ばしている。
前髪を眉の上で切りそろえた丸顔の彼は、いかにも軍人になりたてのように見えた。
さらにいかにも美味しそうにビスケットを食べている様は、軍服でなければ帝大生どころか高等学校の学生と間違えそうだ。

「本当に菰野は菓子が好きだな」

いっぽうの旦那様はもっさりとした長い白髪で、目は人間と違い血のように赤い。
ビスケットを囓る口もとからは鋭い牙がのぞいていた。
爪は黒くて長く、尖っている。
千年以上も生きているというわりには、若い将校くらいの年齢に見えた。

「どうした?
食べないのか」