長さは五寸……私が手のひらを広げて親指から小指までよりも多少、短いくらいか。
乳白色で上に向かって少し、湾曲して生えていた。
その、人にはない角は目を引くが、それ以上に額の左側に目が行く。
そこにはぽっきりと折れた角の跡があった。

「ああ、これか」

私の視線に気づいたのか、彼の手がそこへ行く。
不躾な自分が恥ずかしくなり、顔が熱くなった。

「昔……もう千年以上も前か。
まだ天子が京都にいた頃、公通の祖先にへし折られてな。
それから綱木の家の者に使役されている。
いやー、あの頃はやつがれも悪だったからな」

かっかっかと大仰なくらいに声を上げておかしそうに彼は笑っているが、私には今の話のどこに笑う要素があるのかわからない。

「あの頃はって、今だって十分悪いでしょうが」

そんな彼を見る菰野さんの視線が冷たい。

「昔に比べればやつがれもずいぶん丸くなったぞ。
あの当時は大江山(おおえやま)酒呑童子(しゆてんどうじ)鴻ノ巣山(こうのすやま)の……」

「はいはい。
もう聞き飽きて、耳にたこができてますから」