幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

声が聞こえてきてそちらを見ると、綱木中尉――ではなく少尉が得意げに説明しながら取り巻きの皆さんとこちらへ歩いてくるところだった。
彼は人攫い事件で誤認逮捕し、無実の人間に対し酷い扱いをしたためその後、降格となっていた。

「げっ」

しかし私たちの存在に気づき、実に嫌そうな顔になる。

「『げっ』とはなんだ、『げっ』とは。
こっちのほうが上官なのに失礼な」

旦那様は不機嫌そうな顔になったが、どうみても少尉をからかうためにわざと作っている。
このたび、旦那様は戸籍を得たのもあって少佐扱いとなった。
扱いとはいえ、綱木少尉よりも階級が上だ。

「じょ、上官といっても扱いであって、少佐ではないだろうがっ!」

簡単に挑発に乗り、すぐに少尉が噛みついてくる。
だからすぐに旦那様から遊ばれるのだとなぜ気づかないのだろう?

「ほー、上官に楯突くのか。
上官に楯突く奴には厳しい罰が必要だよな、菰野中尉」

「はい、そうですね」

菰野さんも旦那様に乗ることにしたらしく、見せつけるように落ちていた枝を拾って鞭のように振った。
ちなみに旦那様が少佐扱いになったのに伴い、彼も中尉へと昇進している。