幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

それに彼が怒りを爆発させるものいつものこと、だ。
ただ、今日、ちょっと違ったのは。

「せめて順番にこい、順番に。
それなら相手をしてやらんでもない」

少し赤い顔でそっぽを向いて腕を組み、偉そうに菰野さんが言う。

「まあ……!
では、まずお酒をどうぞ」

本当に嬉しそうな顔で船津さんが菰野さんの杯にお酒を注ぐ。
それをひと息に彼が飲み干したところで、今度は田沢さんが煮物を差し出してきた。

「菰野さま。
あーんですわ」

素直に口を開け、彼はそれを食べさせてもらっている。
どういう風の吹き回しか知らないが、彼の中でなにかが変わったのだろう。

「旦那様。
どうぞ」

「おお、すまん」

そんな風景を見ながら、私は旦那様の杯にお酒を注ぐ。

「本当に見事な桜ですね」

見上げた桜は大きく、まるで桜色の雲の下にでもいるようだ。

「ああ。
いつも客を招待して、観桜の会を開いているくらいだ」

それなのに、こんないい時期に私たちに貸したりしてよかったんだろうか。
とてもいい記念になってありがたいけれど。

「別宅の桜はそれは見事なものでな。
帝都でも……」