それを皮切りに彼が、機関銃のように話し出す。
それに旦那様は面食らっているように見えた。
「どうしてこんな大変なときに、僕を仲間はずれにするんです?
たまたまそうなったのなら仕方ないですが、この人がわざわざ僕を別の場所に配置してくれと頼んだそうじゃないですか!」
春の雪事件の日、菰野さんは帝都ホテルとは別の場所にいた。
あんな場面を見ずに済んでよかったと私は思っていたのだが、違うのだろうか。
「綱木長官がこの人に涼音さんを殺せと命じるのなら、僕が命がけで止めましたよ!
ええ、止めましたとも!
なのにみすみす命令に従って、涼音さんを手にかけて!」
「えっと、菰野さん……」
あれは名を使って命令されたので逆らえなかったのだ。
旦那様の意思ではない。
「わかってます、わかってますよ。
この人が綱木長官に絶対に逆らえない、なにかがあるんだって。
でもいつもいつも僕に隠れてこそこそと。
それでつらそうな顔を見せられるこっちの身にもなれっていうんですよ!」
「菰野、お前、気づいていたのか」
旦那様が驚いた顔をする。



