幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

本当に喰えない狸め!

「これでまた、白珱は私のものだね」

立ち上がった綱木長官が旦那様の角を拾う。

「返せ!
やつがれの角を返せ!」

「えー、やだよ」

取り返そうと躍起になって旦那様は手を出すが、それをひらりひらりと軽く長官はよけていく。

「まあさ、今度は綱木の家に永劫仕えろとは言わない。
私が死ぬまででいいから付き合ってよ」

「い、や、だ。
お前に付き合ったら命がいくつあっても足りぬ!」

なんだかんだ言いながら長い付き合いになるのだろうなと、争うふたりを見ながら重いため息が出た。

綱木長官は次の用事があるとかでようやく解放される。
すぐに菰野さんが迎えに来た。

「はーい、帰りますよ!」

それはいいのだがあの日から、彼はなぜだかずっと怒っている。

いつもならよく喋る菰野さんがずっと無言で、車の中は居心地が悪い。

「じゃ、僕はこれで」

「菰野さん!」

私たちを家に送り届け、そそくさと帰ろうとする彼を止めた。

「なにか……怒ってます?」

私に尋ねられ、俯いて面倒臭そうにため息をついたあと、彼は勢いよく顔を上げた。

「怒ってるってそりゃ、怒ってますよ!」