「やつがれにはもう、二本の角があるからな。
綱木家との契約は切れた。
これからは好きにやらしてもらう」
余裕たっぷりに旦那様が笑ってみせる。
「へー」
しかしそう言うが早いか足を一歩踏み出し、テーブルの上にあったフォークを握った長官の手が目にも留まらぬ速さで動く。
何事もなかったかのように彼がソファーに座ると同時に、ごとっとなにかが落ちる重い音がした。
「え……」
視線を向けた先には旦那様の角とおぼしき物体が転がっている。
おそるおそる旦那様の額へ目を向けると、せっかく生えた左の角がなくなっていた。
「やつがれの角がー!」
折れた角の根元を手で押さえ、旦那様が酷く痛そうに身を丸める。
「わ、私がまた、元に戻してあげますから」
おろおろと旦那様の額に手をかざし、力を使おうとした――が。
「あれ?
あれ?
なんで?」
まったくなにも起こらない。
「ああ。
あのときのあれは、火事場のくそ力のようなものだったんだろう。
まあ、あれだけの力があるのはわかったんだし、訓練次第では自由に使えるようになるよ」
平然とお茶を飲みながら長官がにっこりと笑う。
この人はわかっていて旦那様の角を落としたのだ。
綱木家との契約は切れた。
これからは好きにやらしてもらう」
余裕たっぷりに旦那様が笑ってみせる。
「へー」
しかしそう言うが早いか足を一歩踏み出し、テーブルの上にあったフォークを握った長官の手が目にも留まらぬ速さで動く。
何事もなかったかのように彼がソファーに座ると同時に、ごとっとなにかが落ちる重い音がした。
「え……」
視線を向けた先には旦那様の角とおぼしき物体が転がっている。
おそるおそる旦那様の額へ目を向けると、せっかく生えた左の角がなくなっていた。
「やつがれの角がー!」
折れた角の根元を手で押さえ、旦那様が酷く痛そうに身を丸める。
「わ、私がまた、元に戻してあげますから」
おろおろと旦那様の額に手をかざし、力を使おうとした――が。
「あれ?
あれ?
なんで?」
まったくなにも起こらない。
「ああ。
あのときのあれは、火事場のくそ力のようなものだったんだろう。
まあ、あれだけの力があるのはわかったんだし、訓練次第では自由に使えるようになるよ」
平然とお茶を飲みながら長官がにっこりと笑う。
この人はわかっていて旦那様の角を落としたのだ。



