まさしく先日、旦那様が私を手にかけたあの場面そのものだった。
ごく稀に未来が見えたともいうし、それだったのか。
――それとも、私の能力が見せたものだったのか。
「しかし涼音さん。
あそこで死んでよかったね」
まるで喜ぶべきことのように綱木長官が笑う。
いや、喜ばねばならないのだ。
「おかげで蒿里家と縁が切れて、大罪人の娘と後ろ指を指されなくて済む」
私はあの日、死んだと処理された。
そしてまったく別の人間、渡辺涼音として新しい戸籍を得た。
〝渡辺〟は旦那様の戸籍を作るにあたり、綱木長官がつけた姓だ。
「あの。
まあ……その……」
それでも彼は恩に着せるようで腹が立つ。
あのときは本当にこれで旦那様とお別れなのだと死ぬよりもそれがつらかった。
あんな思いはもう、したくない。
「どんな理由にしろ、やつがれに涼音を殺せと命じた公通を許さぬ!」
旦那様がどん!とテーブルを叩き、食器がガシャンと跳ねた。
「ほー、私に楯突こうというのか」
挑発するようにすーっと綱木長官の目が開き、ふたりが睨みあう。
ごく稀に未来が見えたともいうし、それだったのか。
――それとも、私の能力が見せたものだったのか。
「しかし涼音さん。
あそこで死んでよかったね」
まるで喜ぶべきことのように綱木長官が笑う。
いや、喜ばねばならないのだ。
「おかげで蒿里家と縁が切れて、大罪人の娘と後ろ指を指されなくて済む」
私はあの日、死んだと処理された。
そしてまったく別の人間、渡辺涼音として新しい戸籍を得た。
〝渡辺〟は旦那様の戸籍を作るにあたり、綱木長官がつけた姓だ。
「あの。
まあ……その……」
それでも彼は恩に着せるようで腹が立つ。
あのときは本当にこれで旦那様とお別れなのだと死ぬよりもそれがつらかった。
あんな思いはもう、したくない。
「どんな理由にしろ、やつがれに涼音を殺せと命じた公通を許さぬ!」
旦那様がどん!とテーブルを叩き、食器がガシャンと跳ねた。
「ほー、私に楯突こうというのか」
挑発するようにすーっと綱木長官の目が開き、ふたりが睨みあう。



