彼は冗談で済ませたが、今のは本気でそう思っていた。

「そうだねぇ。
これ以上ないほどの衝撃を与えないと効果はないし、それに他の人間が涼音さんを殺そうとしたら反対にこれが殺すだろうしねぇ。
そうなるとこれが自分で殺すしかない」

「しかし、旦那様がいないところで私を殺せばよかったのでは」

「涼音さんが死んだらこれがすぐに気づくよ」

うんと旦那様が頷く。

「それで風よりも速く駆けつけて、涼音さんを手にかけた人間を殺すだろうねぇ。
可哀想にねぇ、本気で殺すつもりなんてないのに、殺されるなんてねぇ」

「うっ」

物憂げに彼がため息を吐き出し、息が詰まる。
そこまで言われたら納得するしかない。

「……わ、わかりました」

どうにか声を絞り出し、不本意ながら仕方なかったのだと認める。

「わかってくれてよかったよ」

綱木長官はほっとした表情を見せたが、彼の思うように言いくるめられた気がしてならない。

それでも危険な目に遭わせたお詫びだと長官はビクトリアンケーキを用意してくれていた。
こんなもので許すほど、安い人間だとは思わないでもらいたい。
……食べるけれど。