「まー、そのときはそのときじゃないかな」

しれっと言う長官が恐ろしい。
彼にとって私の能力の開花が重要で、生死はどうでもいい問題なのだ。

「それにしても期待以上だよ。
まさか、これの角まで再生するとはね」

長官の視線が旦那様の額に行く。
そこにはもう片角ではなく、立派な一対の角が生えそろっていた。

「これまで戦闘で手足が欠損したものは不自由な生活を送るしかなかったが、これからは涼音さんの力を使えば今までどおりの生活ができそうだ」

にっこりと彼が私に微笑みかける。

「わ、私でお役に立てるなら」

異能を持たずなにもできない無能といわれてきた私が、これからは人の役に立てる。
これほど嬉しいことはない。
――などと喜んでいたが。
これはそんな、単純な問題ではなかったのだ。

「涼音、騙されるではない!
こやつはお前を殺そうとしたのだぞ!」

旦那様が綱木長官を睨みつける。

「そうですね、その点については恨んでおります。
返答如何によっては許しません」

「許さないってなにをするつもりかな」

挑発するように綱木長官がうっすらと笑う。
けれど私は怯まなかった。