幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

一縷の希望が見えた気がして、彼を見上げた。

『軍の実験動物としてなら、生かしてあげるよ。
涼音さんの血肉に妖には治癒効果があるんだろう?
人間にも効くかもしれないからね』

実に嬉しそうに公通が笑う。
平気でこんなことが言えるこやつは人間ではない、化け物だ。
鬼であるやつがれよりも、ずっと、ずっと。


天をも焦がすほど巨大な炎龍がその大きな口を開けやつがれたちを食らいつくそうと襲いかかってくる。
公通は炎龍をよけないというよりも、よけるという考えすらない。
それはやつがれを信頼しているからではなく、やつがれが身を挺してでもあやつを守るのが当たり前だからだ。

襲いかかってきた炎龍の口を掴んで止める。
そのまま渾身の力で真っ二つに引き裂いてやった。
力を使い果たしたのか、その場に蒿里伯爵が崩れ落ちる。

「まだだ……まだ私は諦めん……蒿里家の悲願……」

これで諦めてくれるかと思ったのに、彼はまだ反撃しようと公通の足を掴んできた。
人の妄執とはかくも恐ろしい。

「白珱。
始末しろ」

公通に命じられ、蒿里伯爵の前に立つ。
綱木家の人間に使役されるようになってもう千年以上。