幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

やつがれと目があい、彼は固まっている。

「見つけた」

まるで大好物のお菓子を見つけたかのごとく公通が嬉しそうに笑う。
庭に出て、蒿里伯爵を追い詰めた。

「兵を捨てて大将が逃げ出すとは情けない」

呆れるように公通が、芝居がかった動作で首を振ってみせる。

「せ、戦力的撤退だ!」

伯爵は反論してきたが、どうみても虚勢でしかない。

「白珱。
相手をしてあげて」

「ああ」

公通に命じられ、伯爵と対峙する。

「お父上に手を上げるのは心苦しいが……」

「私を父などと呼ぶなーっ!」

間髪入れず怒りを露わにした伯爵の作り出した炎が龍となって襲いかかってきた。
安い挑発で乗ってくる小物は、御しやすくていい。
ひょいっと軽くやつがれがよけただけでそれは地面に激突し、大きな音を立てた。

「どうして誰も彼も我が蒿里家の悲願を邪魔するのだ!」

次々に襲いかかってくる炎龍をひらりひらりとよけていく。
悲願などと言っているがただ単に自分の今の地位が気に入らず、祖先のせいにして僻んでいるだけだ。
そんなことでこんな大それた騒動を起こすなど、阿呆だ。