いないでほしい。
いてほしくない。
こんな――こんな地獄に。
不意に庭のほうで大きな音がして、そちらへ向かう。
外は降り積もった季節外れの雪があたりを真っ白に染めていた。
「綱木」
そこでは父と綱木長官、長官を守るように旦那様が対峙していた。
「私の邪魔をするなっ!」
父が吠え、龍となった火柱が綱木長官へ襲いかかる。
しかしそれは旦那様から易々と切って落とされた。
「まだまだっ!」
次々と父が炎龍を生み出していく。
しかしそれらは綱木長官どころか、旦那様に傷ひとつ負わせられない。
「これで終わりかな?」
まるで子犬の相手でもしていたかのように綱木長官は余裕の顔で立っている。
髪も服も乱れ、肩で息をしている父とは格が違うのだ。
「はっ、これからが本番だーっ!」
父が叫ぶと同時に天にまで達するほどの炎龍が現れた。
それが大きな口を開け、食い尽くそうと綱木長官に襲いかかる。
「旦那様っ!」
無意識に足が動き、駆けだしていた。
しかし、私が彼らの元にたどり着くより前にどーん!と大きな音がして、火柱が上がる。
「……嘘」



