幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

彼らは成功を確信しているようだが、私はまったく信じていなかった。
――案の定。

そろそろ三時も過ぎたかという頃、反乱軍の動きが急に慌ただしくなってきた。

「――が突破されました!」

「――陥落!」

「異能特別部隊がこのホテルに迫っています!」

……来た。

もそもそと動き、起き上がる。
来るとは思っていたが、ここに異能特別部隊が来るとは絶望的だ。
他の部隊ならまだしも、あの人の指揮する部隊ならばきっと――。

まもなくして激しい銃撃音が聞こえ始めた。
慌ただしく人々が逃げ惑う。
残っていた人質たちはこれで助かると緊張の中にもどこかほっとした顔をしているが。

「お前たちも逃げろ」

反乱軍の数人が私たちの縄を切ってくれる。

「あいつら、敵味方関係なしだ」

それを聞き、全員が引き攣った顔をしたあと、我先にと広間を出ていった。

「……お父様」

私も立ち上がり、当てもなく広間を出る。

「お父様!
お義母様!
紫乃!
どこですか!」

父たちを探して歩いたホテルの中は酷い有様だった。
なにもかもに見ないフリをし、ひたすら父たちを探す。

……旦那様もここにいるのだろうか。