あの綱木長官が反乱など許そうはずがない。
父たちはあの人の手のひらの上で、いいように踊らされているに過ぎないのだ。

それにしても熱くなって我を忘れている父ならわかるが、本当に紫乃にはこの反乱の成功が見えているんだろうか。
先読みの異能のない私でさえ、これは絶対に失敗するとわかるのに。

そのうち、政府の高官たちがひとりずつ連れ出されていく。
そのまま誰も戻ってこないが、まさか、ね。
残った面々は不安な面持ちで顔を見あわせていた。
私はひとり、床に転がったままこれからを考えていた。
どうにかして綱木長官が父たちを殺すのを阻止しなければ。
父は私を平然とゴミと呼んだが、それでも育ててもらった恩はある。
紫乃は血を分けた、たったひとりの妹だ。
義母が死ねば紫乃が悲しむ。
あんな家族だが、それでもどうにかして守ろうと決めていた。

漏れ聞こえてくる話を総合すると帝都各地で有志たちが一斉に蜂起し、主要機関を占拠。
皇居にまで踏み込み、陛下を盾に取っているらしい。
紫乃の先読みで政府軍の出方を読んで行動し、危機は回避しているそうだ。