幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

けらけらとおかしくもないのに笑う紫乃を、睨みつける。

「なぁに、その反抗的な目」

途端に紫乃の機嫌が悪くなり、不満そうに私を見下ろした。

「私が素敵にして差し上げたのに、なにが不満なのよ!」

紫乃の手が飛び、ぱん!と乾いた音が響く。
ぶたれた頬がじんじんと痛むが、それでも紫乃を睨みつけた。

「このっ……!」

再び、紫乃の手が上がる。
ぶちたいのならいくらでもぶてばいい。
しかし今の私は絶対に、折れない。

「紫乃。
そんなゴミにかまってないで、準備をしろ。
今日はオマエが頼りなのだからな」

父に声をかけられ、紫乃が手を下ろす。

「はぁい、お父様」

頼りと言われていい気になったのか、啓輔をともなって上機嫌で紫乃が広間を出ていった。

「まさか、オマエがいるとはね」

私の前に立ち、今度は父が高圧的に私を見下ろした。

「オマエを名代に寄越したおかげで、綱木は難を逃れたというわけか。
運のいい奴め」

父は吐き捨てたが、本当にそうなんだろうか。

「お父様。
こんなことはおやめください」

「異能を持たぬ無能のくせに私に指図するな!」

今度は父の手が私の頬に飛ぶ。