幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

自分が主役なのに注目されているのは私で紫乃は酷く機嫌が悪く、気の毒になった。
もしかしたらこういう状況を狙って綱木長官は私をここへ出席させたのかもしれない。
あの人はこういうのを面白がる、悪趣味なところがある。

乾杯の音頭になぜか、父が立った。

「今日の良き日にお集まりいただき、ありがとうございます。
ついに蒿里家長年の悲願が叶う日がやってまいりました」

父の挨拶は紫乃の結婚を喜ぶものではないような気がした。
悲願とは三鷹家と姻戚関係を結ぶことだろうか。
しかしそんな話、一度も聞いたことがない。

「先々代が不可抗力で猫を逃がして主上の不興を買って以来、我が家は長く冷遇されてきた。
本来なら公爵間違いなしの名家なのに、いまだ伯爵。
もう、そんな時代は今日、終わりを告げるのです」

だんだんと悪い予感が高まっていく。
いったい、父はなにをしようと。

「さあみなさま、ご準備を」

父のグラスにとくとくと係のものがワインを注ぐ。
会場は私の周囲にいる完全に困惑顔の一団と、父の話を聞いて熱気に包まれている一団に分かれていた。

「では、新しい時代に」

「うおlっ!」