長女の輿入れは妹のお古、妹にはなにもなくても新しいものを買ってやる。
これがこの家では当たり前だった。

話のあとは紫乃の部屋へ連れていかれた。
納戸で寝起きしている私と違い、紫乃の部屋は西洋のランプや家具で取りそろえてあり、私などはその豪華さに目眩がする。

「まあね、昨日はちゃんと『取ってこい』ができたし、ご褒美はあげないとね」

私を床に座らせ、紫乃はタンスをごそごそとあたっている。
ちゃんと頼まれたものは紫乃の手に渡ったようで、ほっとした。

「これなんかどうかしら?」

紫乃が手にしていたのは朱色の大柄な市松模様の振り袖だった。
竹模様があしらわれているそれは祖父からプレゼントされたものだが、ダサくて気に入らないと一度も袖を通していないもの知っている。

「ほら。
着せてあげる」

「えっ、あの。
自分で、着るので」

私に断られ、みるみる紫乃の機嫌が悪くなっていく。

「この私が。
着せてやるって言ってるの。
早く脱いで」

「は、はい」

紫乃に睨まれ、怖くなった私は帯に手をかけた。

「なにこれ」

私の首筋を見て紫乃は驚いている。