幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

それをやんわりと振り払う。
私が反抗的な態度を取り、義母の顔にさっと赤みが走った。

「なにをするの!?」

反射的に義母の手が振り上がる。
けれど私はこれ以上ないほど冷静だった。

「今日、私は綱木長官の名代としてきております。
どういう意味かおわかりでしたら、どうかその手をお納めください」

頭を下げて義母の判断を待つ。
前のようにぶちたいのならぶてばいい。
そのときは……どうしようか。

「ふん!」

少しして義母が鼻を鳴らす音がして頭を上げる。
彼女は怒ったまま、私を放置して出ていった。
彼女が見えなくなり、ほっと胸をなで下ろす。
ぶたれなくてよかった。
いや、ぶたれて私が痛い思いをするのはかまわない。
けれど名代である私をぶったとなれば、綱木長官がどう出るのか。
想像すると、怖い。

しばらくして披露宴が始まった。
紫乃の結婚相手はもちろん、三鷹家の嫡男だ。

「……ねえ」

「……聞きました?」

「……え、そうなの?」

「……穢らわしい」

そこかしこからひそひそ声が聞こえ、皆は落ち着かない。