わかっているけれど旦那様を癒やすしかできない自分が歯痒かった。
その日は綱木長官の名代として私が、紫乃の祝言に出席することになっていた。
「綺麗だ……!」
今日のために誂えた着物を着た私を見て、旦那様は喜んでいる。
桜色は私の顔によく映えると、旦那様が選んでくれた色留め袖だ。
「でも、私が綱木長官の名代なんていいんでしょうか……」
普通ならご家族か、秘書官あたりが出席するものだ。
それを使役している鬼の、しかも妻の私など。
「あやつが涼音に行ってほしいというのなら、行くしかあるまい。
あやつのお願いはお願いではなく命令だからな」
先ほどまであんなに喜んでいたのに、旦那様の顔が渋くなる。
『蒿里家の娘の祝言に招待されちゃってさ。
ちょっと涼音さん、行ってきてくれないかな』
……などと綱木長官に笑顔で頼まれたときは背筋がぞっとした。
私が異能を持たぬ無能で、あの家で酷い扱いを受けてきたのは知っているはずなのだ、あの人は。
なのに平気で、私に行けという。
いったい今度はなにを企んでいるのか。
その日は綱木長官の名代として私が、紫乃の祝言に出席することになっていた。
「綺麗だ……!」
今日のために誂えた着物を着た私を見て、旦那様は喜んでいる。
桜色は私の顔によく映えると、旦那様が選んでくれた色留め袖だ。
「でも、私が綱木長官の名代なんていいんでしょうか……」
普通ならご家族か、秘書官あたりが出席するものだ。
それを使役している鬼の、しかも妻の私など。
「あやつが涼音に行ってほしいというのなら、行くしかあるまい。
あやつのお願いはお願いではなく命令だからな」
先ほどまであんなに喜んでいたのに、旦那様の顔が渋くなる。
『蒿里家の娘の祝言に招待されちゃってさ。
ちょっと涼音さん、行ってきてくれないかな』
……などと綱木長官に笑顔で頼まれたときは背筋がぞっとした。
私が異能を持たぬ無能で、あの家で酷い扱いを受けてきたのは知っているはずなのだ、あの人は。
なのに平気で、私に行けという。
いったい今度はなにを企んでいるのか。



