幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

すぐに旦那様はカゴに手ぬぐいと着替えを入れて戻ってきた。

「悪いが、ここで着替えろ。
終わったら戸を叩いてくれ。
やつがれは竜蔵が涼音の着替えを覗かぬように見張っておる」

「わかりました、ありがとうございます」

旦那様の姿がふたたび脱衣所へ消えたところで、お風呂からあがって手早く身支度を済ませる。
終わって、脱衣所の戸を叩いた。

「旦那様。
着替え終わりました」

「ん、もう竜蔵はおらぬから入ってきていいぞ」

開けられた戸の内には、旦那様の言うとおり綱木中尉はいなくなっている。

「とんだ邪魔が入ったな」

「そうですね」

旦那様と苦笑いしながら脱衣所を出る。
外では管理の老爺に綱木中尉が詰め寄っていた。

「鬼がいるとは聞いていないぞ!」

「私どもも竜蔵様がお越しになるとは聞いておりませぬが……」

老爺は困惑して額の汗を拭いており、可哀想になる。

「どうかしたんですか」

そのうち、騒ぎを聞きつけたのか菰野さんたちも起きてきた。
もう深夜といってもいい時間、大変申し訳ない。

「やつがれたちが風呂に入っていたら、竜蔵が入ってきたのだ」

「まあ……!」