「しかし、やつがれの傷は涼音のおかげで綺麗に治ったのに、涼音には傷を残してしまって面目ない」
はぁっと憂鬱そうに旦那様がため息をつく。
まだ恥ずかしかったが、それでも後ろを向いて旦那様と向きあった。
そっと触ったその胸には、あれほど深い傷だったのにその痕跡もない。
「綺麗に治ってよかったです」
あんな痛そうな傷、旦那様の綺麗な身体に残したくない。
「涼音からはいいにおいがするとは思っていたが、お前はどうも特別なようだ」
「特別、ですか……?」
旦那様はいったい、なにを言いたいのだろう。
「涼音の血肉には妖の怪我を一瞬で治してしまう効果がある。
さらにはその、良質で桁外れに蓄えられる精気だ。
妖なら誰もが涼音を手に入れたがる」
「それは旦那様も同じですか」
どうか違うと言ってくれ。
祈る思いで旦那様をじっと見つめる。
「そう、だな」
しかし彼はぽつりと呟いて気まずそうに目を逸らした。
旦那様もあの、狒々と同じなんだ。
私の身体目当てで、嫁にと迎えただけ。
そうでなければ私など嫁に欲しいと言うわけがない。
わかっていたはずなのに、なにを私は失望しているのだろう。
はぁっと憂鬱そうに旦那様がため息をつく。
まだ恥ずかしかったが、それでも後ろを向いて旦那様と向きあった。
そっと触ったその胸には、あれほど深い傷だったのにその痕跡もない。
「綺麗に治ってよかったです」
あんな痛そうな傷、旦那様の綺麗な身体に残したくない。
「涼音からはいいにおいがするとは思っていたが、お前はどうも特別なようだ」
「特別、ですか……?」
旦那様はいったい、なにを言いたいのだろう。
「涼音の血肉には妖の怪我を一瞬で治してしまう効果がある。
さらにはその、良質で桁外れに蓄えられる精気だ。
妖なら誰もが涼音を手に入れたがる」
「それは旦那様も同じですか」
どうか違うと言ってくれ。
祈る思いで旦那様をじっと見つめる。
「そう、だな」
しかし彼はぽつりと呟いて気まずそうに目を逸らした。
旦那様もあの、狒々と同じなんだ。
私の身体目当てで、嫁にと迎えただけ。
そうでなければ私など嫁に欲しいと言うわけがない。
わかっていたはずなのに、なにを私は失望しているのだろう。



