幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

しかし逃げる間もなく、旦那様はざぶざぶとお湯の中を進んで距離を詰め、私の隣に腰を下ろした。
……まではよかった。

「えっ!?」

私の手を取り、旦那様は足のあいだに座らせて後ろから抱きしめてきた。

「これは、ちょっと……」

旦那様の腕が私の胸に触れる。
それも恥ずかしいが、旦那様の立派なものが私の身体に当たっているのがなによりもどうしていいのか困る。

「別になにもせぬ」

もじもじしている私を旦那様は笑っている。
しかし仮にも夫婦なのだし、そういう営みは普通なのだ、私が意識しすぎなんだろうか。

「腕。
跡が残りそうだな。
すまぬ」

旦那様が私の右腕を持ち上げる。
そこには先日、旦那様が食らいついた跡がまだ残っていた。

「でも、旦那様がな、舐めてくださったおかげで思ったよりも早く治りそうです」

縫わなければいけないんじゃないかというほど深い傷だったが、数日に渡り旦那様が丁寧に舐めてくださったおかげで縫わずとも綺麗にくっついた。
この分なら跡が残ってもさほど目立たないのではないかと思う。