山鳩色の着物を着る私の肩に後ろから手を置き、紫乃が前を見させる。
雪が降り積もる中、満身創痍の旦那様が私になにかを叫んでいた。
けれど、シネマトグラフのようになにも聞こえない。
旦那様が一歩、また一歩と近づいてくる。
私の肩に左手を置いたかと思ったら、その右手が私の胸を貫いた。
「……かはっ」
せり上がってきた血を吐く。
それは白い雪を赤く染めた。
「……ほら。
お姉さまはあの鬼に殺されるの」
ゆっくりと背後を振り返る。
目のあった紫乃は嬉しそうににぃーっと口角をつり上げた。
「今の幸せは所詮、まがいもの。
せいぜい、そのぬるま湯に浸っているといいわ。
もうすぐ地獄が、待っているんだから」
旦那様の手が抜き去られ、支えのなくなった私の身体が崩れ落ちた。
「いやーっ!」
自分の叫び声で目が覚めた。
「どうした!?」
慌てた様子ですぐに旦那様がそばに来てくれる。
「どうした、悪い夢でも見たか」
「そう、ですね。
きっと悪い夢、です」
心配そうに背中をさすってくれる彼に、曖昧に笑ってみせた。
今のは私の不安な心が見せた夢。
きっとそうに違いない。
雪が降り積もる中、満身創痍の旦那様が私になにかを叫んでいた。
けれど、シネマトグラフのようになにも聞こえない。
旦那様が一歩、また一歩と近づいてくる。
私の肩に左手を置いたかと思ったら、その右手が私の胸を貫いた。
「……かはっ」
せり上がってきた血を吐く。
それは白い雪を赤く染めた。
「……ほら。
お姉さまはあの鬼に殺されるの」
ゆっくりと背後を振り返る。
目のあった紫乃は嬉しそうににぃーっと口角をつり上げた。
「今の幸せは所詮、まがいもの。
せいぜい、そのぬるま湯に浸っているといいわ。
もうすぐ地獄が、待っているんだから」
旦那様の手が抜き去られ、支えのなくなった私の身体が崩れ落ちた。
「いやーっ!」
自分の叫び声で目が覚めた。
「どうした!?」
慌てた様子ですぐに旦那様がそばに来てくれる。
「どうした、悪い夢でも見たか」
「そう、ですね。
きっと悪い夢、です」
心配そうに背中をさすってくれる彼に、曖昧に笑ってみせた。
今のは私の不安な心が見せた夢。
きっとそうに違いない。



